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シューマン『子供の情景 作品15』よりトロイメライの弾き方

シューマン 『子供の情景 作品15』よりトロイメライの弾き方

シューマンについて

ロベルト・シューマンは1810年、ザクセン王国(現ドイツ)のツヴィッカウで6人兄弟の末っ子として生まれました。
父親は、若い頃文学者を志し、その後出版業などを営んでいました。母親も文学と関わりのある家系に生まれ、ピアノも習っていました。
シューマン自身の永遠のテーマとなる、「音楽と文学」は生まれた時から身近にありました。
シューマンがピアニストになることを夢見て、勉強を続けていた16歳の時、父親が病により他界してしまいます。
その後母親たちの希望もあり、一旦はライプツィヒ大学の法科に入学し、法律の勉強をします。
しかし、どうしてもピアニストへの夢を諦めきれず、フリードリヒ・ヴィークにピアノを習い始めました。
懸命にピアノを練習していたシューマンですが、20歳のときに器具を使った指の訓練をしすぎたために右手中指が炎症を起こすようになります。
22歳のときには中指の炎症が悪化し麻痺してしまったため、ピアニストになる夢を諦め、作曲に力を入れていくこととなります。
そして文学の才能も持ち合わせていたため、作曲と同時に執筆活動にも力を入れ始めて、数々の音楽評論活動、自らが中心となった『音楽新報』という雑誌の刊行などをしていました。
若いころからお付き合いする女性が途切れたことのないモテ男のシューマンですが、25歳の頃から自身の師であるヴィークの娘クララと少しずつ愛を深めていきます。
その事をヴィークが知ってしまい、2人の交際に大反対します。
というのも、その当時クララは女性でありながら有名ピアニスト、かたやシューマンはまだ無名の作曲家。娘のピアニストとしての将来や、シューマンと結婚して本当に幸せになれるのか、など心配は絶えなかったと思われます。
その心配がいきすぎて、裁判となり、シューマンとクララは引き離されてしまいます。
その裁判の最中に書かれていた曲の1つが、『子供の情景』です。結局裁判には、シューマンとクララ側が勝ち、無事結婚することができました。
幸せの絶頂にいたシューマンですが、年を重ねるにつれ、昔から不安定であった精神状態がどんどん悪化し、鬱の症状もひどくなっていきます。
シューマンの作品には、フロレスタンとオイゼビウスという2人の人物がよく出てきます。
この人物たちは、シューマンの中にいる代表的な別人格ですが、恐らくそれ以上の人格がシューマンの中にはあったのではないかと考えられます。そのことにより素晴らしい音楽が生まれましたが、一方でシューマン自身の精神的な負担になっていたとも考えられます。
最終的に44歳の時にライン川に身を投げ、自殺未遂を起こしますが、漁師に助けられ命拾いをします。
その後、精神療養所に入りますが、2年後他界してしまいます。46歳の時のことでした。

『子供の情景 作品15』について

1838年、シューマンが28歳の時に作曲されたこの曲集は、30曲ほど小品を作曲した中からシューマン自身が12曲を選び、『子供の情景』と名付けました。
その後終曲が設定され、全部で13曲となりました。全曲の標題は「見知らぬ国と人々(異国にて)」、「不思議なお話」、「鬼ごっこ」、「おねだり」、「幸せいっぱい」、「重大な出来事」、「トロイメライ」、「炉辺で」、「木馬の騎士」、「むきになって」、「怖がらせ」、「子供は眠る」、「詩人は語る」となっています。
それぞれに上記のように標題が与えられていますが、実際の情景を表したものではなく、音楽による詩的な表現であるとシューマン自身が話しています。
また、題名も『子供の情景』となっていますが、子供の学習のための作品ということではなく、大人から見た子供の様子や心を描いた作品であるため、演奏における表現力は高度なものが必要となっています。
また、シューマンの連作作品集の中で、これほど調や動機の点でそれぞれの曲が関連を持っている作品はあまりありません。
クララとの結婚を反対され、師でありクララの父であるヴィークに引き離されていた時期の作品であるため、クララと想いが通じ合っている幸福感と引き離されもう結婚できないかもしれないという絶望感の両方がそれぞれの曲の中から感じ取ることができます。
また、クララはこの曲集をとても気に入っており、この曲集について何度も手紙でシューマンに感想を送っています。
この曲集があったことでクララ自身がシューマンとの結婚をより現実的に感じてより強く意識していったのではないかと考えられています。
そしてリストもこの曲集を高く評価し、家でもよく弾いているとシューマンに送った手紙が残されています。

「トロイメライ(夢)」について

シューマンが作曲した中でも特に有名な曲で、誰しも1度は聴いたことがあるのではないかと思います。
この曲集の中でも1曲だけ取り上げられて演奏されることも多いです。
美しいメロディの中に、幻想的な雰囲気を作り出す和声がつけられており、トロイメライ(夢)という言葉にぴったりの曲想となっています。

演奏について

一見簡単そうに見えたり聴こえたりするこの曲ですが、実はしなければならないことが多く自分でいくつもの声を出したり楽器を演奏するように、弾き分けをしなければなりません。
メロディを意識して美しくうたうことは勿論、バスや内声にも耳を傾け、満ち足りた幸福感の中で幻想的な響きを出していくことが大切です。
内声は必要な時に必要な分だけ出し、決して乱暴になることなく弾いてください。
また、シューマン特有の拍のずれがこの曲にも出てきています。
最初の2小節をとってみても、本来強拍は1拍目にくるはずが、1~2小節目にかけてのフレーズにより、2小節目は2拍目が強拍となっています。
このようなずれというもがこれから先、この曲の終りまで続きます。
そして、6小節目のソプラノのメロディでC-A-Aとなっているところがあります。
面白いことに、これはクララの音型と呼ばれるもので、クララの綴りがCLARAであることから、その中で音を表すことのできるC-A-Aを使って、曲の中に名前を入れています。
これは様々な作曲家が使った手法でもあり、シューマンの曲の中にはよくこのクララの音型が見受けられます。
9小節から16小節まではヘ長調-ト短調-ヘ長調-二短調と長調と短調をいったりきたりすることで、安心と不安の感情をいったりきたりする気持ちが表わされています。
長調から短調になったとわかるきっかけの音(10小節のes,fisの音、14小節のcisの音)を漫然と弾くのではなく、きちんと意識することが必要です。
17小節からは最初のメロディに戻ってきます。その時に前回と全く同じ表現をするのではなく、少し雰囲気を変えてください。
どのような変化も考えられますが、鍵盤のタッチの仕方、うたう分量、ソプラノやバス、内声のバランス、音量等を、この曲全体、また16小節までどのように弾いてきたか考えて、たくさん試してみてください。
もっと全体的に静かに弾いてもよし、逆に最初よりあっさり弾いてもよし…。
22小節はまたしてもクララの音型が出てきますが、それとともにこの曲の中でバスからソプラノまで1番物理的に音の距離ができるところでもあります。
印象的な場面になる音ですので特に意識して弾きましょう。
これが絶対に正解だということは音楽にはありません。(あまりに逸脱し、自然でないものは困りますが…)年齢とともにこの曲の表現の仕方も変わっていきます。
その変化する楽しみがこの曲には多くあり、その人の人生が詰まった曲になっていきます。
一見簡単そうな曲ですが、一生勉強を続けていける曲でもあります。

まとめ

この曲では、タイが多用されているので、どこからどこまで音が伸びているのか、どの音とどの音が重なるのか、よく確認してください。
シューマン特有の音のずれを感じて弾くこと、しかし自分の中で拍を見失ってしまうことのないようにしてください。
ソプラノ、バス、内声、和声の変化などよく聴いて弾き分けをしてくだい。同じ平面上で弾いてしまわないように。
その際タッチの仕方、どのくらい打鍵するのか、身体や腕などの使い方、自分のイメージと出てくる音が一致しているか、よく聴いて確認しながら練習してください。
たくさんの表現を試して自分だけのトロイメライを作っていってください。

公開日:
最終更新日:2018/10/06